TOKYOROOMS展 クリエイターインタビュー
さまざまな分野で活躍するクリエイターたちが、それぞれの価値観で「6畳の部屋」を表現する展覧会「TOKYOROOMS展」。
同じ広さの空間でありながら、そこにはつくり手の原体験や思想、そして美意識が色濃く表れている。
今回は、サンローラン初の日本人デザイナーとしてコレクション制作に携わり、現在はファッションを起点に写真やプロダクト、アートなど多領域で表現を続けている相場慎吾さんに話を聞いた。

Q. 今回の展示テーマを受け取ったとき、最初に浮かんだ情景は何でしたか?
A.
最初に浮かんだのは、パリで触れていた空気感でした。
デザインスタジオに漂っていた張り詰めた時間や、週末の蚤の市のざわめき。古いものが特別な存在として切り離されるのではなく、日々の暮らしの中に息づいている街の風景。
「部屋」というテーマを受け取ったとき、空間をデザインするというよりも、自分の内側にある景色や感覚が、身体の輪郭を越えて溢れ出してくるような感覚がありました。
この展示では、原風景そのものを再現するのではなく、それらが今の自分の中で混ざり合い、かたちを帯びていく過程を空間として表しています。
Q. これまでの活動や原体験の中で、今回の部屋づくりに影響しているものは何ですか?
A.
最も大きな影響を受けているのは、パリで過ごした時間、とりわけエディ・スリマンと一緒に働いた経験です。
彼と仕事をする中で、自分の審美眼や感性はより研ぎ澄まされていったと思います。
ほんのわずかな差異で印象を変えるシルエット、ミリ単位で詰めていくディテール、素材の温度までを含めて捉える質感。
そうして得た感覚は、自分の表現における判断基準のひとつになっています。

Q. 今回の部屋で、来場者に最も感じてほしいことは何ですか?
A.
完成された美しさそのものというよりも、その手前にある混沌です。
アイデアがまだ整いきる前の、少しざらつきを残した状態。異なる時間や質感を持つものが重なり合い、ひとつのかたちへと向かっていく。その途中にある熱量を感じてもらえたらと思っています。
空間には、リサーチを通して集めたアンティークやヴィンテージに加え、自身で制作した写真やアート作品など、異なるベクトルを持つものを置いています。
ひとつのオブジェクトから空間全体へ、あるいは全体から細部へ。そうした視線の往復の中で、この部屋にある美しさと混沌のあいだを、それぞれの感覚で見つけてもらえたら嬉しいです。
Q. あなたにとって“部屋”とはどのような存在ですか?
A.
私にとって部屋とは、思考の領域が可視化される場所です。

頭の中にある記憶や感覚、惹かれてきたものの輪郭、まだ言葉になっていないイメージ。
そうした内側にあるものが、身体の境界を越えて外へ滲み出し、空間として立ち現れる。
部屋は単なる箱ではなく、自分の思考や感性が外側に拡がった状態に近いものだと思っています。だからこそ、その人が何に惹かれ、どのように世界を捉えているのかが表れるのだと思います。
Q. 来場者へのメッセージをお願いします。
A.
今回あらためて感じたのは、理想の部屋とは整っていることそのものではなく、自分の感覚が無理なく呼吸できる状態なのだということです。
混沌と調和。相反するものをどちらかに寄せるのではなく、それらを抱えたまま成立している状態に、今の自分らしさがあるように感じています。
また、空間をつくる中で、過去の記憶や感覚は保存されているものではなく、その時々でかたちを変えながら、今の自分へとつながっているものだと強く感じました。
今回の部屋は、そうした時間の重なりが身体の輪郭を越え、ひとつの空間として現れたような展示です。
ぜひご自身のペースで視線を動かしながら、小さな世界を覗き込むように楽しんでいただけたら嬉しいです。
