夜泣き石や治癒の石など、これまで語られてきた石にまつわる伝説や信仰は、石が単なる素材としての存在を超え、超自然的な力の媒介とみなされてきた証です。
日常生活においても、山で巨大な岩と対峙した時や、石碑の前で手を合わせるとき、目に見えない「何か」に時として不思議な畏怖や感動を覚えることがあります。
この実体をもたない「何か」を石の表面に持ち出せないか。
マイケルジャクソンが「スムーズ・クリミナル」の中で見せたゼロ・グラビティの動きをヒントに、石に非現実的な振る舞いを与えることで、その意思のような何かを映し出そうと考えたのです。
この物体は、通常の物理法則では説明できない石と地面との関係性にあり、まるで石が自らの意思で立っているかのように見えています。
あるいは置かれた場の水平が狂ったかのように、空間自体がいつもより少し歪んで見えてくるのかもしれません。
これは石をどのように置くかについての思考です。
具体的な機能はありませんし、プロダクトと呼ぶには曖昧です。
しかし空間を仕切る目印として、その場に何らかの作用をもたらしてくれることは想像ができます。
photography : Kenji.Kagawa